世界自然遺産地域保全事業(2016年~)
このプロジェクトは2016年度から2024年度までの8年間を事業期間とするダイキン工業株式会社様による寄付支援事業です。
1. 多様性に富むしれとこの森を復元する事業
知床世界自然遺産登録地内で斜里町が推進する「しれとこ100平方メートル運動」 は、地域が主体となって行う森林再生活動として世界自然遺産登録を審査するユネスコ(国連教育科学文化機関)からも高く評価されています。かつての農地開拓等で失われた「広葉樹と針葉樹が入り混じった森」を復元し生物多様性の回復・維持を図ることは、世界自然遺産登録地の保全管理の上でも重要です。
ダイキン工業株式会社様による第2期支援期間(2016~2024年)では、第1期支援期間(2011~2015年)に実施したしれとこ100平方メートル運動地内を流れる岩尾別川とその流域での自然再生に引き続き、対象を運動地全域に広げ森の復元を進めていきます。広葉樹や針葉樹の育成と植樹、森の復元を進める上で障壁となっているエゾシカ対策として過去に設置した防鹿柵や樹皮保護ネットの補修作業などを行います。その他、運動地約860ヘクタールの約25パーセントを占めるササ地や造林地の森林化に向けた作業を行い、開拓以前の森の復元に向けた歩みを進めます。
2. 世界遺産の価値を守り、伝える事業
森林の復元には、100年や200年という長い時間がかかります。長きにわたってこの活動を続けていくためには、森を守り育てていく実際の担い手を育成していく必要があります。次の世代を担う子どもたちにも森林の役割とその重要性、さらに森を復元することの意義を伝える活動を実際の森づくり作業と並行して実施していくことが大切です。
森は生き物たちに食べ物やシェルターを提供し、逆に生き物たちは森づくりの一部を担っています。彼らはいわば持ちつ持たれつの関係を保っているのです。例えば知床の森はヒグマにドングリやコクワなどの食べ物を提供し、ヒグマは摂取した食物を糞として森の中に散布することで、植物の成長に必要な栄養分や種子を運ぶ役割を担っています。しかし、ヒグマは人に危害を与えうる存在でもあります。人間とのトラブルを最小限にとどめ、ヒグマが将来に渡って大自然の中で暮らしていける状態を維持していくことは、知床の価値である特異な生態系や高い生物多様性を保全していく上で重要です。
ダイキン工業株式会社様による第2期支援期間(2016~2024年)では、知床の魅力や価値を次世代に伝え、未来の知床の自然保全分野で必要とされる人材を育てることを目的とした普及啓発活動を行っていきます。1)知床自然愛護少年団*1と知床キッズ*2の活動への支援、2)地元斜里町および近隣の小、中、高等学校への出張授業や現地実習等の受け入れ、3)知床自然センターにて「しれとこ100平方メートル運動」の活動や精神を広く一般のビジターに知っていただくためのレクチャー、を継続的に実施していきます。
*1 ウトロ在住の小学校3年生から中学校3年生までを参加対象とした団体。斜里町ウトロ住民が、無償で運営・企画・実施。
*2 羅臼町在住の小学校4年生から6年生までを参加対象とした団体。羅臼町公民館と環境省、知床財団の三者が主催者となって運営・企画・実施。
ダイキン工業株式会社様による第1期支援期間(2011~2015年)に羅臼町で実施した「ヒグマと人の共存を手助けする活動への支援事業」は、第2期でも引き続き行っています。第1期ではヒグマと人との軋轢を回避するため、人の生活圏にヒグマが出てこないように電気柵を設置しました。設置エリアではヒグマの出没が少なくなるという成果が見られましたが、羅臼町は海岸線に沿って住宅地が長く続いていますので、全てに電気柵を設置するのは現実的ではありません。そこで、電気柵を設置していないエリアのヒグマ出没に対して、今後どのように対処するべきかという課題も残りました。
そこで第2期では、第1期に設置した電気柵の維持管理に加え、設置していないエリアへの対策としてヒグマが好まず出没しにくい環境作りに取り組んでいきます。具体的にはヒグマが身を隠し、餌場や移動の場として好んで利用する住宅地近くの背丈の高いアキタブキやオオイタドリ、クマイザサの藪の刈り払いが検討されています。
*ダイキン工業株式会社様のホームページにもこのプロジェクトが掲載されています。