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解説5:知床半島ヒグマ管理計画

「知床半島ヒグマ管理計画(以下「管理計画」という)」は、2017年4月に環境省などの関係行政機関によって策定された、知床世界自然遺産地域および隣接地域(斜里町、羅臼町、標津町)におけるヒグマ対策に係る統一的な計画です。

全文PDFファイルのダウンロード可、知床データセンターHPから策定の経緯も見ることができます)

 

2012 年3月、環境省などの関係行政機関は、ヒ グマ対策を統一的に推進するための広域的な対応方針「知床半島ヒグマ保護管理方針(以下「保護管理方針」という)」を策定しました。

 

保護管理方針は、知床世界自然遺産地域科学委員会の下部組織である3つのワーキンググループ(エゾシカ・陸上生態系WG、適正利用・エコツーリズムWG、河川工作物AP)から集まった各分野の専門家や、関係行政機関、知床財団などが約2年をかけて議論し、とりまとめたものです。

 

今回の管理計画は、保護管理方針の実施結果やその間に明らかになった課題、社会状況の変化などを反映して策定されました。この管理計画の計画期間は5年間(2017~2021年)です。

 

図5-1. 「知床半島ヒグマ管理計画」の表紙

 

 

本管理計画はその目的として、

を掲げています。

 

具体的には、対象地域(斜里町、羅臼町、標津町)を利用者の多さや経済活動のレベル、住宅の有無などに基づいてゾーニング(地区区分)し、出現個体の有害性によってヒグマの行動段階を規定し、それらと各個体の行動履歴に応じて適切な対策を実施することとしています。

 

たとえば、フレペの滝遊歩道(斜里町、遺産地域内、特定管理地)に現われた行動段階1(人を避けないが、人為的食べ物を食べてはいない)の個体に対しては、誘引物除去と追い払いが基本対応となります。

 

一方、斜里本町市街地や羅臼市街地(遺産地域外、ゾーン4)に侵入した行動段階1の個体は、基本的に捕獲されることになります。また、同じフレペの滝歩道(特定管理地)でも、餌付けされた個体(行動段階2)は人身被害を引き起こす危険のある「問題個体」とみなされ、「基本的に捕獲」となります。

 

このように知床では、画一的な「ヒグマ出没 → 即駆除」ではなく、個体識別による行動履歴や、この章で説明したゾーニングとヒグマの行動段階区分に基づいた、段階的なヒグマ対応が全域で実施されています。

 

図5-2. 知床半島ヒグマ管理計画における知床半島のゾーニング

 

本管理計画では、「特定管理地」を新たに設定しました。特定管理地は、特に個別な対応を必要とする場所です。

 

図5-3. 知床半島ヒグマ管理計画における行動段階区分

 

「段階1+」を新たに設定しました。段階1+は、追い払い等に対して行動改善が見られない、人に対する警戒心が極端に低い個体を指します。

 

アマチュアカメラマンの中には、「写真を撮りやすいヒグマは、国立公園内でもすぐに撃たれてしまう」と誤解している方がいますが、そんなことはありません。ひどく人馴れしてしまった個体(行動段階1~1+)であっても、国立公園(ゾーン1~2、特定管理地)の中にいる限りは、いきなり実弾で撃たれるようなことはありません。ただし人為的食物(生ゴミや餌付けの餌)を食べてしまい、「行動段階2」になってしまうと、基本的には捕獲(捕殺)するしかなくなります。

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