私たち知床財団は、生け捕りしたヒグマにGPS首輪を装着し、ヒグマの行動圏や季節による行動パターンの変化を追跡する調査を、2004年以来細々と続けています。このような調査から得られたデータにより、知床のヒグマの生態に関する理解が進みました。また、どの時期に、どこで、どのようなヒグマ対策が必要なのか、といったヒグマ対策の方針を検討する際にも、これらのデータが役立っています。
メス成獣は比較的狭い範囲で通年行動していましたが、オス成獣は広い範囲を動き回っており、国立公園(世界遺産地域)の中だけにとどまらず、国立公園の外の地域も利用していました。また稜線を越えて斜里町と羅臼町の両方を往来しているオス成獣もいました。
大型で運動能力の高いヒグマ(特にオス)にとっては、知床半島は狭すぎるようです。これは、世界遺産地域内で人馴れした個体や餌付けされた問題個体が、遺産地域外の住民生活圏まで移動してトラブルを起こすケースがありうることを意味しています。
私たちはこの調査結果から、たとえ国立公園内であっても人馴れを防ぐための追い払いは必要だと考えています。
7月初めは知床五湖周辺などの国立公園内で行動していたが, 間もなく国立公園の外に出て, ウトロ高原の農地やオシンコシン滝の上流付近などで8月まで行動。9~10月には国立公園内に戻り、 ルシャ川付近に滞在していた。おそらくルシャではカラフトマスやシロザケを主に採食していたと推測される。
半島西側(斜里町側)の国立公園内外だけでなく、稜線を越えた半島東側(羅臼町側)の国立公園外の海岸線付近も利用。羅臼側では海岸に漂着した海生哺乳類の死体や、付近にある水産加工場の管理の悪かった残渣(魚の内臓などのゴミ)を食べていた可能性が高い。実際この個体は, 2009年8月に羅臼町内の水産加工場の残渣置場脇で捕殺された。なおこの個体は, 2002年8月に羅臼町峯浜地区で交通事故にあった後逃走した個体と同一であることが事故現場に残されていた体毛のDNA分析から判明した。
私たちは、知床で自然を「知り・守り・伝える」活動をしています。
これらの活動は知床を愛する多くのサポーターの皆様に支えられ、今後も支援を必要としています。