知床フィールド講座「知床の海を支える魚たち」
実施日:2006年9月9日
知床の海は豊かだと言う・・・
何が豊かなのかを、実感させてくるのは、この男しかいない!
そう、財団の新人ながら、オホーツクの海を誰よりも知る研究者、野別貴博氏が今回の講師。
知床の魚たちの生活を、豊富な知識と、海と魚へ知床へのあふれる思いで、解説しながら、大潮の海で遊んだ。
通常、フィールド講座はまず屋内で今日のテーマについてレクチャーを1時間ほど行ってから、フィールドに出る。テーマに関する基礎知識を得てからだと、自然との距離がぐっと近づくと好評な方法だ。
しかし、今回は集合の後、「さっそく海に行きましょう!」
実はこの日は大潮。潮の満ち干きが極大になる日で、夜の間満ちていた潮が午前中にかけて一気に引き、浅瀬には取り残された海水がプールのように残る。このタイドプールと呼ばれる潮溜まりが、海の生き物たちとの出会いの場なのだ。この日は干潮が10時。タイドプールで遊ぶ絶好の時間帯を逃す手は無い、とまず海へ繰り出すこととなったのだ。
タモとバケツを携えて、引き潮で露わになった海岸を歩き、タイドプールにタモを突っ込んでとにかく掬う。上から眺めるだけでは「本当にいるの?」と思っていたが、掬い取った網の中にはいるいる!
(魚種)
見つかった生き物についての話が、講師からぽんぽん飛び出す。何が取れても話のネタはつきない。何を投げても打ち返してくる強打者・・・流石オホーツク海最強の専門家である。
話は海草にも広がり、半島の羅臼側と斜里側での「植生」の違い、時折見られるエメラルドグリーンの美しい色の海域は、実は今じわじわと問題になりつつある「磯焼け」という現象により死の海と化している(!)などなど、専門家ならではの、最新の話題が満載であった。
午前中で、25種類の魚たちを捉え、様々な話題を楽しんだ後は、漁業に関連の無い魚を選び、午後の部のために数匹を残して、あとは海に帰す。
午後は持ち帰った魚たちを、屋内でじっくり観察。ここで講師が取り出した分厚い図鑑。これを使って、この魚がどんな分類の、なんと言う名前かを探し当てる。よくよく見ると、魚の形も様々であることに気づくき、一種ゲームのような感覚もあり、また分類のロジックを追える楽しみもある。みなさん熱中。
ここで観察した魚たちは講師の母校の研究室にサンプルとして送られ、有効に使われるそうです。
海、というと、広い広い大海原を見て、大きいと思うわけだが、魚の生活に触れると、深い海のそこから、水面まで、巨大な空間を戦略的に使っているイメージが湧いてきた。
海は広くて深くて大きくて、そして豊かだった。