「旭山動物園の知床ヒグマわくわくウィークエンド」開催報告
実施日: 2009年10月17日(土)・18日(日)
旭山動物園と知床財団の共催イベント「旭山動物園の知床ヒグマわくわくウィークエンド」を10月17日(土)から18日(月)に開催しました。
「人とヒグマが安心して暮らせる知床」を目指しAirDo北海道国際航空の支援で3年間にわたり実施してきたキムンカムイ・プロジェクトの成果を、子供から大人までたくさんの人々に知ってもらい、野生動物との共存について考えてもらおうと企画されたものです。坂東園長を交えたパネルディスカッションや、親子向けヒグマ調査体験、園内全域を使ったクイズラリーやパネル展など、2日間にわたって行われたプログラムはどれも大盛況となりました。
「親子でヒグマ調査隊」は、キムンカムイ・プロジェクトで行ったヒグマの追跡調査を、子供たちにも体験してもらおうと企画したプログラムです。
今回は、体重計や麻酔用吹き矢などだけでなく、60キロ以上もある捕獲檻まで、本物の道具一式を、知床から2トントラックで運び込んでリアルに再現しました(普段と違った点は、捕獲したヒグマにポリエステルの毛が生えていたことです)。2日間でのべ10組32名の親子の皆さんが「入隊」してくれました。
隊員となった子供たち、お父さん、お母さんは隊長の指示に従って作業を進めますが、中のヒグマが「グウウウー」とうなったりするので、皆ハラハラどきどきです。無事発信器を付けヒグマを放獣した後、今度は子供隊員が交代で電波受信用アンテナをふり、どこにいったか動物園の中を追跡します。どの隊員もすばらしく優秀で、毎回無事にヒグマの居場所を突き止めることができました。
坂東園長も交えて行われたパネルディスカッション「動物園で考えよう、人と野生動物のこと」は、知床キムンカムイ・プロジェクトの一環として行われたGPS追跡調査やDNA分析調査で分かってきたことなどを知床財団の増田次長や葛西野生動物対策主任が解説したほか、坂東園長からは、動物園に暮らす生き物たちのふるさと、本来の生息地を保全することに協力するための取り組みの例として、ボルネオの自然保全に貢献することを目指したプロジェクトの紹介がありました。約30名の参加者があり、限られた時間の中でしたが、質疑応答の時間には参加者の皆さんから知床のヒグマなどについての質問も相次ぎ、熱気あふれる90分となりました。
普段は行われていないヒグマのもぐもぐタイムを、知床わくわくウィークエンドのスペシャル企画として行った「今日はごちそう 知床ごはん」。ヒグマの「トンコ」に知床からもってきたカラフトマス、ヤマブドウ、ビートといった知床のヒグマにとってはとっておきのごちそうをプレゼントしました。実況中継と解説は、拡声器をにぎりしめた知床財団スタッフと飼育係の中田さんです。
ぬっとあらわれたトンコは、プールにあったカラフトマスをまず大事そうに平らげ、次はオリをよっこらよっこらオリをよじ登り、ヤマブドウをついばんでいました。ずっしり重そうなおしりをブルンブルンさせながらオリをのぼっていく姿や、間近に見るヒグマのおなかや手のひらに、お客さんからは大歓声。ちなみにビートはチラリと見ただけで、お気に召さなかったようでした。
2日間にわたって行った「知床ヒグマまるわかりクイズラリー」、園内各地にかくされたヒントパネルをたよりに、知床のヒグマについての4問のクイズに回答するもので、子供から大人まで230名以上の方々にご参加いただきました。ゴールとなった学習ホールには、答えの解説パネルだけでなく、知床キムンカムイ・プロジェクトの成果をたくさんのイラストや写真を使って分かりやすく解説した手作りパネル展も行っており、小さな子供たちから大人まで皆さん興味深そうに見入っていました。
以上のようなプログラム目白押しの2日間のために、今回は9名のスタッフが旭山動物園に乗り込みました。直前の数週間は休日返上で準備にあたりましたが、参加してくれた子供たちの笑顔や、「ヒグマってこんな生き物だったんだ」といった来場者の皆さんの声に、全ての疲れも吹き飛ぶ思いでした。1人でも多くの人々に、知床のヒグマのこと、野生動物とともに生きていくことについて、思いをはせてもらえたらうれしいです。
なお展示パネルは、今後も継続して旭山動物園に貼っていただけることになっています。また、知床財団スタッフが今年春に作成した「しれとこシカ絵巻」も「エゾシカの森」に引き続き展示中です。旭山動物園ツアーをご予定の方は、是非お立ち寄り下さい。
(担当:加藤)