野生動物医学会で住宅地のシカ対策を発表
実施日:2009年9月4日(金)
富山大学で開催された日本野生動物医学会第15回大会で、口頭発表をおこなってきました。
発表タイトルは、「知床半島羅臼町におけるエゾシカの住宅地進出と化学的不動化を伴う対応 -その現状と課題-」。
昨年(2008年)5-6月に当財団羅臼地区事業係が羅臼町役場などと連携して実施した、エゾシカとの市街戦(吹き矢による麻酔捕獲作戦)の話題を中心に、経緯、実施時の状況(麻酔薬の種類や使用量含む)、今後の課題などについて発表しました。
エゾシカの増加に伴う交通事故多発や植物相の変化に悩む知床半島では、主に猟銃を用いたエゾシカ捕獲の努力が続けられています。
しかし最近シカの進出が顕著な住宅地や道路上では、猟銃は危険なために使うことができません。
さらに日本の法律では、緊急時を除くと麻酔銃ですら、住宅地でシカへ向けて発射することが禁じられているような状態です。
そこでやむなく吹き矢を使って計28頭を捕獲したのですが、狙う場所や接近方法などにひと工夫加えることで、射程距離が短い欠点をカバーした話などをしました。
( 札幌で今年も中心市街地をオスジカが駆け抜けたようですが、油断していると道内全域の住宅地で羅臼のようなシカ対策が必要になるかも?? )
昨年の捕獲作戦の成果か、今年は羅臼町役場周辺で闊歩するシカを見ることがほとんど無くなりましたが、新たに人馴れした個体が侵入してきそうな気配もあり、イタチごっこはしばらく続きそうです。
そもそも住宅地へ侵入してくるシカの供給源である、山林のシカをどうやって減らしていくか?
森が再生可能なレベルまで、知床のシカを絶滅させることなく減らすことができるのか?
克服しなければいけない課題が自然環境と社会環境の双方に多いため、解決への道のりはまだ遠そうです。
(担当:羅臼地区事業係 / 石名坂)