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札幌市のヒグマ出没騒動について

『札幌市のヒグマ出没大騒動に思う』

公益財団法人 知床財団 統括研究員・事務局長 山中 正実

今、人口190万をこえる北海道最大の都市、札幌がテンヤワンヤの大騒ぎである。都心部に近い中央区の山寄りの市街地にヒグマが出没しているという。すでに十数回の目撃が通報され、クマ騒ぎの話題が連日マスコミをにぎわしている。何らかの原因で住宅地付近に紛れ込んでしまったと思われる1頭の若いクマ(おそらく)に大都市が揺れているのだ。一方、知床では年間のクマの出没件数は、この10年あまりずっと高止まりで600~900件。今回の事件で、あまりに報道関係などからの問い合わせが多いので以下に所見をまとめてみた。ただし、知床は札幌から400kmも離れた遠隔地であり、自然環境も社会環境も全く異なる。また、現地調査をしたわけでもないので、下記はあくまで、一般論、知床での経験や伝え聞く状況証拠からの推測である。

■北海道庁によるドングリ不作原因説は疑問。
北海道のヒグマの秋の主要な食物の一つはミズナラのドングリだが、ミズナラは一つの山でも標高や斜面方位によって豊凶が異なり、広域で同調しない。札幌近郊の山が全山すべて不作なんてことはないだろう。広域的に同調するブナの実の豊凶に敏感に反応して数年おきに大出没を繰り返すツキノワグマの例と安易に同一視できない。広い全道各地の少数の地点でパラパラと、しかも観察手法も統一されていない情報に基づく道庁の説が原因で出没多発なんて言えぬ。
また、ミズナラ以外にもヤマブドウやサルナシ等の代替え餌がいくらでもあり、それらもすべて不作というならまだしも、ドングリだけとりあげて、どうこう言う道庁の説は信頼性が乏しい。

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