帰化植物展開催中です。
「帰化植物」という言葉をご存知ですか?主に人の手によって持ち込まれ、本来の生育域ではない場所に定着して、「帰化」している植物の事です。これらは、元あった植物と競合し、地域の生物多様性にネガティヴな影響を与える事が知られています。
知床でも、これまでにアメリカオニアザミなどの帰化植物が知られ、知床岬等では環境省による駆除事業も行われています。しかし、知床の帰化植物に関するデータは少なく、どこに、どの帰化植物が侵入し、どんな振る舞いをしているか、実は把握しきれていませんでした。そこで今年度、羅臼町から委託を受けた知床財団が、羅臼町内の帰化植物調査を実施しました。町内17箇所の定点調査と、総延長約60kmのルートセンサスを行い、500点近い植物標本を採取しました。
その結果、羅臼町内における57種(9月末時点)の帰化植物の分布とフェノロジー(植物季節)が明らかになりました。今回の植生調査結果は、新たな帰化
植物の侵入や拡大のモニタリングだけでなく、防除が必要な種の選定や、防除方法や時期の選択といった戦略の立案にも役に立ちます。
また、今回得られたデータには、位置情報と時間情報、標本や写真などの根拠となる資料が全てセットになっています。こうしたデータの蓄積は、知床の自然環境の保全管理を行ってゆくためには非常に重要です。
今回採取した標本やデータの一部は、羅臼ビジターセンターで11月末まで行われている「知床・羅臼町の帰化植物展」で見ることができます。展示を見た人
は、「帰化植物」の多くが、見覚えのある、身近な植物だという事に気づくはずです。私たちは、世界遺産地域に隣接した町で、どのように帰化植物と関わって
ゆくのが良いのでしょうか。知床やその周辺に暮らす人たちに、ぜひ見て頂きたいと思います。(担当:眞々部)