北海道大学獣医学部実習
学生が3班に分かれて行った調査の結果をご紹介します。
↓ ここからは実習に来た学生さんによるレポートです。
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私たち北海道大学獣医学部5年生は、野生動物学の授業として4泊5日で知床に実習に来ています。
今回は3班に分かれ、それぞれテーマを決めて現地で調査を行いました。
☆1班「知床大捜査線~痕跡から追う哺乳類の食性~」
(*踊る大捜査線風に紹介します)
1班ではフィールドサイン(糞、食痕など)を見つけ、そこから知床に生息する哺乳類の食性について考察しました。
岩尾別川流域の現場を捜索中…容疑者が残した証拠を発見発見!!
証拠を鑑識に回し、水で洗って糞の内容物を調べた。
糞からは写真のようなアリの一部や甲虫、また別の証拠の糞からは鳥を食べた形跡や植物の繊維も見つかった。さらに!付近に設置したカメラトラップにまんまとキツネがうつっていた!!
以上の証拠から容疑者をキツネと断定し、今回の捜査は終了!
今回の調査でキツネの雑食性が確かめられました。動物の食性を知る上で糞は重要な手がかりです。
糞ごとに食べているものが違い、季節ごとに糞を調べられたら面白いと思いました。
その他…痕跡として見つかったものは、
・糞(クマ、キツネ、シカ、他)
・足跡(シカ、タヌキ)
・食痕(シカの樹皮食いなど)
・その他(クマの爪痕、シカの角擦り跡、骨)
・カメラトラップ(シカ、キツネ)
自然の中で注意深く観察すればたくさんのフィールドサインが見つかります。
みなさんも刑事になったつもりで動物の痕跡を探してみてはいかがでしょうか。
☆2班「潜入捜査!知床の秘境であの虫を追う!」
今回私たちは知床における昆虫・ダニの生態を調査するべく調査チームを結成しました。
調査チームの面々
まず、昆虫チームの成果から報告したいと思います。昆虫チームは外来種のセイヨウオオマルハナバチの発見を主たる目的に、岩尾別川沿いで昆虫の捜索を行いました。その結果、エゾオオマルハナバチやエゾトラマルハナバチ、クジャクチョウ、エゾハルゼミなど12種類の昆虫を発見・捕獲することに成功しました。
今回は外来種のセイヨウオオマルハナバチを発見することはできませんでしたが、対照的に在来種であるエゾオオマルハナバチの生息を確認できました。
今回の調査で発見した昆虫はすべて在来種であり、とりあえず、外来種昆虫の侵入は確認されませんでした。
隊員の雄姿。しかし、獲物は逃がしています。
エゾオオマルハナバチと隊員。この日のハイライトは開始10分間で充分。
ダニグループは周囲の環境とダニの生息数に関連があるかということをテーマに調査を行いました。調査箇所は岩尾別川周辺のササやぶで、ササの高さが異なる場所を選んで、それぞれダニの採集をしました。調査を行った結果、約3時間で合計467匹のダニが見つかりました。このうち小さな子供のダニは85%を占めていました。今回見つかったのはシュルツェマダニなど吸血性のダニ数種類でした。また、ダニが最も多かったのは膝丈くらいのササやぶでしたので、皆様ササやぶに立ち入る際は十分お気を付けください!
草むらからとれたダニ。けっこうあっさりゲットできます。
ダニ採集をする隊員。終わればもちろんダニまみれです……。
担当:ダニー&ハッチ
岩尾別川の本流から支流に入り、淡水魚の箱メガネによる観察と釣りによる捕獲を試みました。
また水辺のカエルやサンショウウオを探しました。
例年より遅れ気味の雪解け増水の影響で、あまり奥地まで入ることができず、魚はまったく発見できませんでしたが、
エゾアカガエル3匹を採集できました。
それらを持ち帰り、エゾアカガエルの胃内容を調べました。
胃内容は1匹目が草本類,2匹目がアリ3匹・ハエ1匹・草本類,3匹目が草本類という結果でした。
草本は昆虫と一緒に飲み込まれ、昆虫が先に消化されたと推測されます。
今回、当初の調査目標を達成することはできませんでしたが、アオダイショウとの遭遇や、
様々な動物の痕跡を発見することができ、知床の河川をとりまく生態系の多様性を垣間見ることができました。