今季のトド調査スタート
知床財団では、知床半島東岸の羅臼町南部と標津町北部において、冬期にトドの定点調査を実施しています。
今年もトドの越冬群の本隊が、ロシア海域から知床へやってくる時期が近づいたため、10月下旬から調査を開始していました。11月8日には、メス成獣主体の計9頭を確認しています。
トドの定点調査は今季で9シーズン目。この調査データの一部は、知床世界遺産地域周辺にやってくるトドの現況を把握するための数少ない資料として、世界遺産の管理に関係する会議などで活用されています。
体が大きく大食漢のトドは、その海域に少数が滞在しただけでも多大な漁業被害を発生させるため、その増減傾向の把握が特に重要な種です。
知床のトドの、本調査による各冬の最大確認頭数は、2006~2010年度には急速に増加していましたが(60-179頭)、夏季の死体漂着が目立つようになった後の2011~2013年度は横ばい、または微減傾向となっており(110-131頭)、この冬の動向が注目されます。
知床では、夏でもごく少数のトドを目撃することがありますが、多数のトド(特にメス成獣群)がやってくるのは、例年11月中旬から2月上旬にかけての期間です。
この時期のトドの群れは、知床半島東岸の特定の場所に集まって休息する習性があり、そのような場所を観察しやすい地点(計6ヵ所)に調査定点を設定しています。
10月25日と11月1日の調査時には、6ヵ所の定点すべてを回ってもトドの群れは発見されませんでした。しかし11月8日には、6ヵ所のうち2ヵ所で、合計9頭のトドを確認しました。
例年、羅臼沿岸の海面付近の水温が10度以下に低下すると、メス成獣群が定点周辺に現われるようになります。今年もまさに同様のパターンでした。
今後は2月の流氷接岸期まで、定期的にトドのカウントや個体識別を行い、今季の越冬来遊数や各個体の知床滞在期間の違いなどを調べる予定です。
(担当:石名坂)