ヒグマGPS首輪をやっと回収しました!
知床財団ではヒグマの行動を詳しく調べるため、ヒグマを麻酔捕獲してGPS付き首輪を装着しています。GPSは人工衛星を利用した測位システムで、GPS付き首輪を付ければ山奥のヒグマの位置も正確に知ることができます。しかし首輪は何かのはずみでヒグマから外れてしまうことがあり、その場合は落ちた場所まで行って回収しに行かなければなりません。
今回は昨年の夏にヒグマから外れた首輪を回収しに、知円別岳の中腹まで行きました。
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昨年11月の状況。身の丈以上のハイマツに阻まれました。
今回のGPS首輪が付いていたのは若いメスのヒグマで、知床五湖の周りや岩尾別台地を主な行動エリアにしている個体です(写真)。昨年の夏までは行動を追跡できてましたが、それ以降は首輪が脱落してしまったと考えられました。首輪が落ちていると推測されたのは標高880mのハイマツ帯です。ヒグマは夏によくハイマツの実を食べるため、ハイマツ帯を移動している際に首輪が枝にひっかかって取れてしまったのでしょう。ヒグマの首輪はよくハイマツ帯で脱落するので回収が大変なのです。
実は昨年11月に脱落した首輪を回収しに行ったのですが、その際はハイマツの藪の壁に阻まれ前進することが非常に大変でした。首輪が落ちている場所まであとわずかだったのですが、体力の限界と日没が迫っていたため撤退せざるを得ませんでした。
今回は残雪の上をずっと歩けたため、スムーズに目的地まで行くことができました。途中、急こう配の雪斜面を滑落しないように慎重に登らなければなりませんでしたが、ハイマツの藪漕ぎをするよりよほど楽でした。
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急な雪渓を登っていきます
目標地点周辺はすでにハイマツが所々雪から出ていましたが、首輪はちょうど残雪の中に埋まっているようでした。雪を掘ること約40分、残雪の下1.5m程の地面に首輪を発見しました。首輪のベルトが千切れており、やはりハイマツの枝に引っかかったのでしょう。人が歩くことも困難なハイマツ帯を普通に動けるヒグマはやはりすごいと思いました。
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首輪は雪の下。雪をひたすら掘ります。
首輪を無事回収した後は残雪の上を歩いたり滑ったりして下山しました。登り3時間かかりましたが、下りはわずか1時間。雪がなかったら今回の回収作業も困難だったと思います。
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どこまで雪を掘ればいいのか?と思っていたらようやく首輪が出てきました。
この後は回収した首輪からGPSの位置データを抜き出し、ヒグマがどのような行動をしていたのか解析していきます。
(担当:能勢)
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首輪を回収した後は、颯爽と滑って撤収!