「第19回しれとこ森の集い」開催報告
実施日:2015年10月18日(日)晴れ
天まで届くような澄み渡る青空のもと、毎年恒例の「しれとこ森の集い(植樹祭)」を開催しました。
一雨ごとに涼しさを増し、知床連山も冠雪、麓も冬支度を始めていましたが、この日の最高気温はなんと23℃!薄手の長袖をまくし上げるほどの暖かさでした。
今年は、地元斜里町や道内、そして本州各地から79名の皆さんにお集まりいただきました。
午前中は、大人向けの「森の番人ツアー」と子ども向けのネイチャーゲームをそれぞれ実施しました。
今年の「森の番人ツアー」は、森の番人と一緒に岩尾別台地上に広がる運動地内を歩くコース。
まずは、未立木地の森林化を目的としたシカ柵内(2002年設置)に植え込んだ木々の成長を見学。次いで、台地上の防風林的な役割を果たす既存林の保護及び樹種多様化を目的としたシカ柵内(2006年設置)を見学していただきました。林床には、ナナカマドの稚樹がたくさん生え、シカ柵の効果を確認することもできました。
そして、最後に植樹用苗及び山採り養生木等の管理育成を目的として1999年に設置し、苗畑として機能しているシカ柵内を見学していただきました。
途中、開拓の歴史を物語る遺構(サイロやでんぷん工場跡地など)も目にすることができるため、かつてここで先人たちが暮らしていたことも直に感じていただけたのではないでしょうか。
子ども向けのネイチャーゲームは、自然の中で遊びながら、もっと自然について感じ、考える機会になってもらえるように準備してきました。集まった子どもたちは、小さな子どもから小学生まで年齢も背の高さも様々です。年齢や大きさによって即席チームを編成!みんな仲良く、元気に参加してくれました。
木の葉かるたでは、形の似ているイタヤカエデとハリギリの違いも、「葉っぱのギザギザでしょ!」とあっさり区別。さすがネイチャーキッズ、脱帽です。
また、ヒントを頼りに、ただ一つの木を当てるゲームでは、観察眼を発揮してくれました。
最後に、「未来の知床の森」というテーマで、班ごとに、思い思いの森を描いてもらいました。
今回使用したクレヨンは、石油ではなく自然の草木・土・実から色をもらって顔料を作り、それに蜜蝋を混ぜて作られています。一つ一つの色に、素材の名前がついているため、身近な草木の色について描きながら学ぶことができます。例えば、「どんぐり」という色もあります。描きながら、今年はどんぐりがあったかな?ヒグマもどんぐりが好きだね、と会話が弾みました。色を通して、自然のこと、動物のこといろいろなことに思いが巡りました。さらに、付近で見つけた様々な木の葉や実を貼り付けていきます。どんなことにも興味津々。生き物への好奇心に満ちたキラキラの瞳。子どもたちとの時間は宝物のようでした。
子どもたちの作品は、しばらくの間、しれとこ100平方メートル運動ハウス内で展示しています。お近くにお越しの際は、ぜひご覧ください。
そして午後は、植樹祭です。シカに食べられやすい広葉樹の苗は、柵内へ植え込む必要がありますが、柵内には植え込む場所がもうあまりありません(詳しくは、昨年の記事をご参照ください。)
そこで、今年はシカの嗜好性が低いトドマツの苗を、柵外へ植え込みました。
まず、スタッフによる植樹方法のデモンストレーション。みなさん真剣なまなざしで見つめていました。ここでも子どもたちの熱い熱い視線。
そして、一斉に植樹開始!あたり一面、トドマツの良い香りが漂います。笹の根が張る地面を掘るのは、なかなか大変!ですが、先を丁寧に研いだ専用のスコップを使うと、スパッと切ることができます。大人も子どもも、和気あいあい、怪我をしないように気を付けながら一つ一つ丁寧に植え込んでいきました。
おかげさまで、今回の植樹祭では、244本のトドマツを植樹することができました。トドマツなどの針葉樹の森は、エゾモモンガをはじめ多くの小型哺乳類や鳥類にも利用されています。
将来どんな森に成長し、どんな動物たちが集うのでしょうか。知床の森づくりでは、開拓前に広がっていた森を目指して、今回植樹したトドマツなど針葉樹のほかに、知床にもともとあったであろう多種多様な木々を育てています。樹木の生長は、とてもゆっくり。どうぞ気長に見守ってくださいね。
準備から手伝ってくださったボランティアの皆さん、ご参加くださった皆さん、ありがとうございました。
(担当:喜内)