南国でヒグマの話をしてきました。
11月21日から24日まで沖縄の琉球大学で「第21回 野生動物と社会」学会が開催されました。
私たち知床財団は、北海道大学敷田教授と共同で観光資源化しているヒグマについてテーマセッションを行いました。
知床を訪れる観光客にとって、ヒグマとは一度は見てみたい野生動物の代表となっています。しかし、そこには観光客や地元住民の安全を最優先する管理側としばしば対立関係を生じている現状があります。こういった状況を念頭に置いて、それぞれの立場を超えた新たな管理の考え方はできないだろうか、といった内容のセッションでした。
ヒグマを観光資源として捉えることは、ヒグマの被害防止や個体群の保全といった従来の視点とは一歩進んだ考え方になります。
会場からは、ヒグマの人慣れが今以上に進行する可能性を懸念する意見、アフリカやカナダなどのすでに野生動物が観光対象となっている海外の事例と比較した意見などが出され議論となりました。
観光と保全(安全)両者が融合した新たなシステムの構築には時間が掛かりますが、より良い知床の環境を後世に繋げるためこれからも議論を続けていく必要があります。
一方、地元の鹿児島県の奄美大島や屋久島を含む琉球諸島では、アマミノクロウサギやヤンバルクイナといった希少種の保全対策の事例が多く発表されていました。
外来生物対策や交通事故対策などの発表が多く、知床との共通点も発見できました。
開催地の沖縄本島では、外来生物であるマングース根絶に向けた取り組みの紹介もあり、23日から24日に行われたフィールドセッションでは沖縄本島北部のやんばるの森を視察しました。
やんばるの森では、島を横断するマングース侵入防止柵や絶滅が危惧されているヤンバルクイナを生態展示している施設を訪れました。対象は違えど、野生動物を相手に試行錯誤している関係者との交流は、お互いに大いに刺激を受けました。