2016(H28)年度ヒグマ事情
標茶町で人身事故が発生しました。既に国立公園内を中心に目撃情報が寄せられています。雪解けも進み、散策や山菜採りなどで山に入る機会が増える時期に入ります。十分な注意と備えをお願いします。
さて、大変遅くなりましたが、昨シーズンの状況をご報告しておきます。
昨シーズン斜里町では目撃数1033件(H27年度1441件)、羅臼町では260件(同311件)と、いずれも一昨年を下回りました(今年2月末まで)。下は昨シーズンの斜里町羅臼町の月別目撃情報です。概ね全体としては落ち着いたシーズンでした(赤:昨年度 青:一昨年度)。
斜里町の平成28年度(赤2月まで、青は一昨年度)の月別ヒグマ目撃件数
羅臼町の平成28年度(赤2月まで、青は一昨年度)の月別ヒグマ目撃件数
とは言うものの、これまでにも繰り返されていた課題はいまだ解決していません。具体的にはウトロ側では国立公園内の車道沿線や、サケマス釣りシーズンの釣り人との至近距離での遭遇、羅臼側では水産加工場残滓に誘引されての出没などが今年も発生しました。
特にサケマス釣りの釣り人とクマとの間でのトラブルについては、一昨年に続き国立公園との境界にある幌別川(斜里町)において、釣り人の荷物や釣った魚がクマに奪われるなど危険事例が相次ぎ、立ち入り禁止措置が取られる事態となりました。その後出没頻度の減少や、事態の改善を願う釣り人有志による自主的な見回り活動などが行われることとなったこともあり、立ち入り禁止措置は解除されました。
この件に関しては、試験的な取り組みとして、さばいた魚の内臓などを有料で引き取る回収ボックスの設置なども行いました。そもそも釣り人がその場でさばいた魚の内臓にクマが誘引されることが誘引の一因であったためですが、これに関しては「もっとこのようなサービスを拡大してほしい」という肯定的意見と「釣り人を甘やかすな」という批判、賛否両論が寄せられました。
毎年同じ原因で危険事例が繰り返されることを、我々としては何としても断ち切りたい思いが一番です。行動をおこした釣り人有志の皆さんも同じ気持ちです。一律に釣り人を締め出すことではなくマナーを守ってもらいながら、何とか状況を改善できないか、模索は今シーズンも続きます。
この4月から知床のヒグマ管理の方向性を示した新たな「知床半島ヒグマ管理計画」がスタートします。新計画はヒグマ管理と言いつつ、むしろ地域住民や国立公園利用者に注意してもらいたいこと、してはいけないことを、いかにしっかりと伝え、守ってもらうか、という点に重きをおいています。
「そんなに簡単にいくわけない」確かにその通りです。でも目標は高く掲げて、実現を目指し努力していきたいと思います。
(事務局長増田)