真鯉地区でエゾシカ・カウント調査(2019)を実施しました
2019年1月から3月にかけて、国道334号線沿いのエゾシカのカウント調査を行いました。この調査は斜里町の三段の滝からオチカバケ橋までの約12kmの区間(主に真鯉地区)で、道路から斜面に出てきているエゾシカを双眼鏡で数えるという内容です。
調査は知床財団が2008年から毎年継続的に行っており、今回で12年目となりました。この調査データは知床世界自然遺産地域科学委員会のエゾシカ・ヒグマワーキンググループに提出され、知床のエゾシカの管理計画に利用されています。
基本的に天候の良い日の午後2時頃から2時間程かけて、移動しながらエゾシカの数をカウントしていくというシンプルな調査で、月に1~2回行いました。エゾシカは外見からメス・オス・子(0才)、という風に見分けることができます。
その結果がこちらです。↓
3月25日が最も多く、110頭のエゾシカを数えました。そのうちの89頭(81%)がメスでした。エゾシカは餌や積雪、天候の状況によって斜面に集まるようになるので、1回の調査ではなかなか傾向をつかむことができません。なので複数回の調査を実施し、その年に最大で何頭確認されたかを記録して経年的に比較しています。
こうすることで、そのエリアでエゾシカが増えているのか減っているのか、傾向をつかむことができます。多い年では757頭(2012年)を数えていますので、今年は過去と比較して少なかったと思われます。
こちらのグラフは1kmあたり何頭のエゾシカが確認されたか、経年変化を表したものです。↓
真鯉地区では2012年に最もエゾシカが多く確認され、1kmあたりの発見数は63.1頭でした。その後は減少し今年は1kmあたり9.2頭となりました。
(注)数字はあくまで道路から見える場所のエゾシカの数(発見頭数)であり、生息数ではありません。
エゾシカは大型草食獣で草本や樹木を主な食物としていますが、生息数が増加しすぎるとエゾシカの好きな(嗜好性の高い)草本が消失したり、樹皮食いによって樹木が枯れたり、幼木が食べられたりといった自然環境への悪影響が現れます。
そのためエゾシカは狩猟や個体数調整として人の手で捕獲されていますが、真鯉地区でも狩猟者や行政機関が捕獲を進めているので、近年のカウント数が減少しているのは、その成果が現れているためかもしれません。こういった調査はシンプルですが双眼鏡さえあればできるので、継続的に実施することができます。今後も調査を続けることで、自然の変化をしっかりと見ていきたいと思います。
(担当:能勢)