「エゾナキウサギの生態」講座を実施しました
9月15日に、上士幌町のひがし大雪自然館で「エゾナキウサギの生態」講座を実施しました。「なぜ知床財団がエゾナキウサギ?」となるかもしれませんが、私は大学院時代にエゾナキウサギの研究を東大雪地域で行っていたため、同博物館の知り合いから講座を依頼され実施しました。
参加者は地元の十勝地域から20名ほどで、これまでにエゾナキウサギを観たことがないという方が大半でした。講座は前半の座学と後半の観察会に分かれ、博物館で身につけた知識を実際に野外で確認してみるという流れです。是非、観察会で姿を観られたら、、、!鳴き声だけでも聴けたら、、、!
座学では写真や動画を通して、エゾナキウサギの生息地や食べ物について発表しました。「鳴きうさぎ」が鳴いている様子を動画で紹介したときは、小動物が発しているとは思えない高い金属音のような声に、多くの参加者が驚いていました。悲しい話でありますが、全球規模で進んでいる気候変動下ではエゾナキウサギが脆弱な存在であることについても話しました。
観察会では、直前まで生憎の雨だったためか、エゾナキウサギは静かな様子でした。。。しかし、登山道を歩き生息地に近づくにつれて、様々な方向から鳴き声が聴こえてきます。ついさっきまで驚いていたような鋭い声に、参加者のみなさんが慣れていく様子が見受けられました。エゾナキウサギはあまり姿を見せてくれませんでしたが、子供たちは溜め糞を何個も見つけるなど、日ごろ見ることのない岩の積みあがった地形に夢中でした。
今回の講座を行ったひがし大雪自然館のある大雪山の周辺地域では、エゾナキウサギが彼方此方に分布しています。知床からは直線距離で150kmほど、運転すると4時間ほどです。しかし、エゾナキウサギにこの距離はとても遠く、知床半島でエゾナキウサギは確認されていません。恐らく、分布拡大期に知床まで到達しなかったのかなと思います。何万年後かには、知床にもいるかもしれませんね。
(サキヤマ)