羅臼ブログ第2回 ウトロと羅臼の違い
この春から斜里町ウトロから隣町の羅臼町に異動した「羅臼新人」土屋のつぶやきに、引き続きお付き合い下さい。さて、すぐ隣りとはいえ新しい地域に住むと、違いにずいぶんと気付かされます。今回はウトロと羅臼の「天気」と「フキ」の違いについて紹介させて頂きます。
羅臼は、天気予報が曇りだったら、雨が降るかもしれないと疑心暗鬼になるほど雨の多い町でした。まず、降水量と日照時間(2019年4月~9月)を気象庁のHPで調べてウトロと羅臼で比較してみました。羅臼は、ウトロより日照時間では約300時間少なく、降水量では約400㎜多いことが分かりました。原因は、春頃から発生する日本海低気圧の影響や知床連山が湿った南風を受け止めることによって降水量が増え、さらに根室海峡で発生する海霧の影響で曇りや雨の日が多くなるということでした。この現象は植物などの生育に大きく影響してくるのはいうまでもありません。羅臼ではウトロでほとんど見ることがなかったサルオガセというコケ(地衣類)をしばしば見かけます。サルオガセとは、ボロ布のように木に垂れ下がり、空気中の水分と光だけで成長する仙人のようなコケです。湿度が高い羅臼側の天候を象徴するコケといえるでしょう。
フキに関しては、北海道のフキの正式和名は「アキタブキ」といい、まるで雨傘並みの大きな葉をしげらせ、ヒグマの大好物ですが、ウトロ側では1980年代からのエゾシカの過増加が原因で激減した歴史があります。一つ一つのフキ群落も小さくてサイズは矮小化してしまっています。一方、羅臼のフキは人の背丈をこえるような大きさで、見るからに美味しそうなみずみずしいフキが至る所に生えています。ヒグマたちは初夏からフキをむさぼり食います。羅臼では道脇や住宅周辺までフキだらけで、毎年のようにヒグマが侵入してきています。
つまり、フキが町中に繁茂しているということは、ヒグマを恒常的に誘引しているというたいへん危険な状態ということです。今年大きな話題になった飼い犬がヒグマに襲われた事件も、家の周辺にフキやオオイタドリなどが密生した場所で起きていました。フキが密生したヤブはヒグマに食べ物と隠れ場所を提供しているのです。フキは人間にとっても季節を感じられる食物ですが、家の周りでヒグマと鉢合わせるくらいなら刈り取ってしまうべきです。そうした危険な場所を減らすべく、今年から知床財団では地域住民と協力して草刈り活動を始めました。来年からはもっともっと大きく展開していく予定です。目標は、住宅地周辺のヤブをなくし、安全できれいな街並みにしていくことです。みなさん、来年は一緒に草刈りしませんか?