「フレぺの滝遊歩道周辺の植物リスト」が知床博物館研究報告 第42集に掲載されました
私たちの身近な遊歩道、フレペの滝遊歩道での6年間の取り組みについてまとめた記録が、知床博物館研究報告 第42集に掲載されました。この報告は以下の知床博物館のホームページにて公開されています。
http://shiretoko-museum.mydns.jp/shuppan/kempo/kempo42
フレペの滝遊歩道は、私たちが拠点を構える知床自然センターに隣接しています。知床連山の全景など、知床半島らしい壮大な景観と様々な自然環境(森・草原・断崖)を同時に感じていただける場所で、遊歩道沿いでは、季節ごとに咲く花を楽しむことができます。この遊歩道周辺における植生については、1980年から単発的な植生調査が実施されており、今回はその際に確認された全ての種と私たちがこの6年間に確認した種をひとつのリストにまとめて報告しました。
植生調査は、その経年変化を長年に渡って見ていくもので、一つ一つのデータの積み重ねが非常に重要です。特に知床では、数年前から問題になっているエゾシカの個体数の増加や、採食行動との関係についてはまだ未解明な部分が多く、それらは植生調査を行うことで明らかになる部分もあるのではないかと推測できます。知床自然センターでは、「フロラ・オブ・フレペ」プロジェクトと題したライン調査を2014年から現在に渡り行ってきました。
その種が確かに存在したと示せる証拠として、標本は不可欠なため、許認可申請を行い、確認された種においては間違いのない記録とするため可能な限り標本を採取しました。また、このプロジェクトで採取した標本167点は、知床博物館に収蔵されています。
この6年間のプロジェクトで確認した61科148属192種1亜種1変種のうち、107種は今回新たに確認された種でした。しかし、作成したリストの33種(全体の17%)が帰化植物だったことについては、決して手放しで喜べない結果です。ただ、エゾシカの減少により近年回復が進んだと考えられる種もありました。稀少植物であるシコタンハコベやクルマユリ、エゾスカシユリやチシマアザミ、エゾノヨロイグサなどです。これらの個体群が今後どのように推移していき、また回復する種が今後も増加するのか大変興味深いところです。
このプロジェクトは開始してまだ6年、植物史における長い年月のほんの一点にすぎません。私たちのプロジェクトはまだ始まったばかりです。私たちは一つ一つの調査の積み重ねが知床の自然保全活動にとって重要なデータとなることを信じています。今後も調査を継続してデータの蓄積を行い、得たデータを検証してフレペの植生が明らかになることを願っています。
(担当:片山)