2023年度斜里町ウトロ市街地におけるヒグマの出没について(9月18日発信)
2023年8月下旬から9月上旬にかけて、斜里町ウトロ市街地内へのヒグマの侵入が多発しました。今年は3月1日に国立公園外でヒグマの目撃があり、例年よりも冬眠明けが早く、3月17日にはウトロ市街地内にヒグマが侵入しました。その後、5月を除いて少なくとも月に1回以上の目撃があり、8月から急増しています(図1)。9月18日時点で、9月7日を最後にウトロ市街地でヒグマの目撃はありませんが、既に過去11年間で最も多い年となりました(図2)。今後も市街地への出没が多発する可能性があります。
図1. 2023年度斜里町ウトロ市街地における月別ヒグマ目撃件数の推移(9月18日時点)
図2. 斜里町市街地における年別のヒグマ目撃件数の推移
※2023年度は9月18日時点の集計
※目撃件数には斜里市街地・ウトロ市街地を含む
ウトロ市街地を航空写真で見ると、市街地内に河川が存在し、海と山林に面していることが分かります(図3)。外周にはヒグマの侵入防止を目的とした電気柵の設置が行われていますが、弱点があります。それは海や河川内、国道や急斜面地等です。このルートをつたってヒグマが移動してきてしまうと、市街地に侵入できてしまいます。
図3. 斜里町ウトロ市街地における電気柵位置図(黄線)およびヒグマの移動予想ルート(赤点線)
近年では4~8件程度に収まっていたのですが、今年はヒグマの餌事情が乏しいことが分かっており、それに関係して市街地内での出没が増えていると考えられます。例年であれば、7月頃からマスの遡上が始まりますが今年は全く遡上が見られませんでした。また、ハイマツやミズナラが凶作年でした。そのため、7月頃から未成熟のヤマブドウの実を食べた糞が確認されており、非常に餌に乏しい年になっていたことが分かっています。そのため、8月下旬から市街地内を流れるペレケ川を遡上するサケ科魚類や、ヤマブドウやコクワ等の液果を目当てにヒグマがたびたび出没して滞留する傾向が見られています。現在は落ち着いていますが、冬眠の時期まで油断できない状況です。
市街地(ゾーン4)へ侵入したヒグマは知床半島ヒグマ管理計画に基づき、捕殺対応が行われます。これはヒグマを追い払うと予期せぬ行動を招く可能性があり、人身事故を誘発する恐れがあるからです。市街地のヒグマ対応では、町や警察等の関係機関と連携して住民の皆様の安全確保に努めていますが、人身事故を防ぐために改めて皆さまにお願いがあります。
①ウトロ市街地でヒグマを目撃した場合はすぐに通報して下さい。
知床財団TEL:0152-24-2775(夜間:090-3778-4308)
②ヒグマの目撃地点にはむやみに近寄らないでください。
③ヒグマ出没時には、周辺での散歩やランニング、サイクリングは控えてください。
④今まで目撃が無かった場所でもヒグマが出没する可能性があります。夜間は、干し魚や生ごみを屋内に必ずしまってください。
今年はヒグマにとっていつもと違う年となっています。
普段は出没が無い場所でも出ないとは言い切れない状況です(写真1)。
そのため、人身事故の発生を未然に防ぐためにどうかご協力をお願い致します。
写真1. ウトロ市街地を歩くヒグマ(2023年9月4日撮影)